君をトリコにする方法



――放課後。


澪と吉川くんはお互いが冷静になってから話がしたいということになり、今日はそのまま帰ることになった。


澪のそばにいたいと思った私と優愛ちゃんは「一緒に帰ろう」と誘ったけど、「嬉しいけど今日はひとりで帰る」と断られてしまい、教室で澪を見送る。



「あれ……瞬、吉川くんは?」



教室の中ひとりでいる瞬に声をかけると、少し悲しそうな顔で返された。



「あー……ひとりで帰りたいってよ」

「そっかあ……」



ふたりは一見真反対な性格だけど、こういうところ似てるなあ。

もっともっと頼ってくれていいのに……



「澪ちゃんたち、心配だね」


「うん……でも、あのふたりなら大丈夫って感じもする!」



にこっと笑うと、優愛ちゃんも「うん、そうだよね」とさっきよりも優しい表情に変わる。


本当はなにも力になれなくて悔しいけど……

ふたりのことを解決できるのはふたりしかいないから。


澪から相談されたらそのときは全力で答えよう。



「よし、じゃあ帰ろっか優愛ちゃん!」


「あ、わたし寄り道するから希帆ちゃんは日高くんとふたりで帰って!」


「え!?」



まさか優愛ちゃんにも振られると思わなくて、ガーンと衝撃を受ける。


ってううん、これはそうじゃなくて。



「優愛ちゃん、私たちのことは全然――」

「ふふ。じゃあまた明日ね、希帆ちゃん、日高くん」



ふわふわとかわいい笑顔を浮かべて優愛ちゃんは行ってしまった。



「……気ぃ遣われたな」

「……ちゃったね」



どちらからともなく目を合わせると、教室を出てそのまま帰路に就く。
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