かこみらい。

「えっと。頭を上げてください」



そう言っても、頭を上げない男子生徒に心の中で大きなため息をつく。

どうしよう。

困っていると、突然、後ろから名前を呼ばれた。



「朋香？　どうしたの？」



聞き覚えのある綺麗な声に、私は振り返る。



「真美ちゃん！」



駅のホームで困り果てていた私に声をかけてくれたのは、近所のお姉さん、真美ちゃんだった。

真美ちゃんはとても気が利くお姉さん。

家庭教師もやっていたほど、頭が良い。

容姿も抜群で、歩けば男の人たちに二度見されるのは当たり前。

そんな真美ちゃんは、この現場を見てすぐに状況が分かったのか、土下座中の男の子の前にしゃがんだ。



「ほら。立ちなさい？」

「えっ。あ……」

「メガネは大丈夫よ。私、メガネ屋で働いているから」



こんなの、すぐに直るわ。


なんて言う真美ちゃんはとても格好良かった。



「あ、ありがとうございます……」



この男の子、美人な真美ちゃんに惚れたな。

顔を赤くして真美ちゃんを見つめている。

散乱したメガネのガラス破片を拾ってハンカチに包む真美ちゃんは本当に女神様のよう。