かこみらい。
雄太くんが私の横を通り過ぎていく。


待って。


そう言いたかったのに、言葉にならなかった。

言葉にしてはいけないと思ったから。

言葉にしてしまったら、私はきっと、泣いてしまうだろう。


楽しかった日のこと。

幸せな日のこと。

振られた日のこと。


全てを思い出して、涙が止まらなくなる。


でも。

雄太くんは、また、私に笑いかけてくれた。

付き合っていた頃と同じ笑顔だった。


……追いかけてもいいんじゃないの?



「雄太くんっ」



我慢できなくなって振り返る。

だけど、そこには雄太くんの姿はなくて。

閑散とした道だけが続いていた。

どこかで道を曲がったのかな。

それは追いかけても無駄だってことを意味しているのかな。


どうなの。

雄太くん……。
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