ハツコイぽっちゃり物語
「私もごめんね」
「いやなんで千桜が謝んの。俺が悪かったんだよ。千桜の気持ち考えてなかったから。千桜に怒らせて困らせたのは俺だから。本当にごめん」
「でも……うん。でも大丈夫だよ本当に。もういいんだよ」
「……そっか」
うんと頷くと恋ちゃんはふわりと笑って何度か頷いた。まるで自分に言い聞かせるみたいに。
「千桜、おめでとう」
そう言った彼の言葉になぜか胸が締め付けられるみたいに苦しくなった。
『おめでとう』と言われて嬉しくないはずないのに、なんで私は素直に喜べないんだろう。
そんな、切なそうに私を見ないでよ恋ちゃん。
私、一体どうしちゃったんだろう……。
「おまたせ〜」
ちーちゃんの声が聞こえたのは恋ちゃんとのほんの少しの会話が途切れたすぐあとだった。
助かった。なんて表現は間違いかもしれないけど、今はそれしか思い浮かばなかった。
私と恋ちゃんの間にちーちゃんが入って、空いてる私の隣に腰を下ろす先輩。
チョコレートたくさんのクレープをひと口齧ると「どうかした?」と先輩に聞かれて首を横に振った。
それは自分にも言い聞かせるように。
先輩のことは好き。大好きなのは変わりない。
でも、あんな表情されたら気になっちゃって……。
甘いチョコレートを食べても心には苦味が増すばかりで、この気持ちは前にも感じられたもので、私はどうしたらいいんだろう。
「みんな最後に観覧車乗ろ。恋、いーよね?」
にっこりと笑うちーちゃんに恋ちゃんが顔を引きつらせて同意した。
私と先輩も顔を合わせてちーちゃんに頷いた。