ハツコイぽっちゃり物語

「途中から2人のこと見えてたからね」

「はぁ、やっぱバレてたんだ……。千桜は気付いてませんよね」

「気付いてないと思うよ。……で、なんで付いてきたの?」


本題はこっちだろうと先に問うとふっと愉しげに笑った。


「いやぁ、親友の初デートが気になっちゃって。あ、でも違いますからね?これだけは言わせてください。別に別れさせようなんて思ってませんから」


彼女は俺の顔を見ない。さっきからずっとそう。話しながら楽しそうに笑うのは何故なのか、そう考えるのを止めたのはその先に2人が居たから。


米倉さんと米倉さんの幼馴染……霧山恋くん。


お互い人ひとり分空けて座っている。
霧山くんは何度か深く頭を下げていた。



「アイツまだ千桜のこと好きなんですって」

「……やっぱり君たちは付き合ってないんだね」

「あ、分かります? 付き合ってませんよ。私がアイツ……霧山に提案したんです」

「提案?」


その時を思い出しているのか彼女は懐かしそうに笑った。


彼女が提案したのは『千桜に霧山恋という男がただの幼馴染にしか思っていない』ということと、『霧山が千桜への思いを絶つ』というなかなかハードなものだった。

< 112 / 200 >

この作品をシェア

pagetop