ハツコイぽっちゃり物語
「途中から2人のこと見えてたからね」
「はぁ、やっぱバレてたんだ……。千桜は気付いてませんよね」
「気付いてないと思うよ。……で、なんで付いてきたの?」
本題はこっちだろうと先に問うとふっと愉しげに笑った。
「いやぁ、親友の初デートが気になっちゃって。あ、でも違いますからね?これだけは言わせてください。別に別れさせようなんて思ってませんから」
彼女は俺の顔を見ない。さっきからずっとそう。話しながら楽しそうに笑うのは何故なのか、そう考えるのを止めたのはその先に2人が居たから。
米倉さんと米倉さんの幼馴染……霧山恋くん。
お互い人ひとり分空けて座っている。
霧山くんは何度か深く頭を下げていた。
「アイツまだ千桜のこと好きなんですって」
「……やっぱり君たちは付き合ってないんだね」
「あ、分かります? 付き合ってませんよ。私がアイツ……霧山に提案したんです」
「提案?」
その時を思い出しているのか彼女は懐かしそうに笑った。
彼女が提案したのは『千桜に霧山恋という男がただの幼馴染にしか思っていない』ということと、『霧山が千桜への思いを絶つ』というなかなかハードなものだった。