ハツコイぽっちゃり物語
お泊まり
――大晦日。
あれから先輩とは連絡は取っていない。
自分と向き合うってどう向き合えばいいのか全然分からない。
だって先輩のことが好きなのは変わらないし、
それでも心のどこかで恋ちゃんを気にかけてしまっている自分がいるし。
「あーーーっ」
もう自分が分からない!なんなの私。
先輩のことが好きなのになんで恋ちゃんのことなんか。
恋ちゃんも好きだよ?幼馴染だもん。ずっと一緒でなんでも話せる唯一の男友達だし。頼りになるし、料理上手だし。
好き、だけどさ。
分からない。
なんでこんなにも恋ちゃんを気にしてる自分の心が意味わからない。
何度目かのため息をつくと、家のインターホンが鳴った。
お母さんがインターホンを覗いて嬉しげに声をあげる。パタパタと玄関の方へ向かった音が私の部屋からでもきこえた。
ドキドキしてるのはきっと――。
ドアが開かれる音に耳を澄ますとゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ただいまただいま〜!」
「チエさんお久しぶりです。これつまらないものですが」
「2人ともおかえり!わあありがとう!後で食べようね」
久しぶりの声に胸を撫で下ろした。
お姉ちゃんだ。
そして、男の人はお姉ちゃんの旦那さん。
霧山愛斗。
恋ちゃんのお兄ちゃんだ。
お姉ちゃんと愛お兄ちゃんは幼馴染。
とてもお似合いの夫婦で、なんといっても美男美女。
そう。今日は我が家に“みんな”集合する日。
お姉ちゃん元気そうだな。よかった。