ハツコイぽっちゃり物語
chapter5

寝顔にキス(恋side)


―恋side―



(れん)、私たち明日1泊2日の旅行行ってくるから。泊めてもらってね』

『はあ!?』


――その話を聞いたのは家を出る直前だった。



真っ暗な部屋の中、ベッドでは静かに寝息を立てている千桜を横目に思い出す。


こんな状況で普通、寝れるわけがない。


てか俺は別にこの部屋じゃなくてもよかったし、ソファで十分だと言ったんだけど、チエさんがどうしてもと念を押してくるから仕方なく、この部屋で寝させてもらってるわけで。


千桜も千桜だ。
あんなによそよそしかったのに今じゃ昔と変わらない寝顔を見せてる。


――……ほんとに俺のことなんとも思ってないのな。


起こさないようにその寝顔をのぞく。

一度痩せた彼女はまた元に戻ったみたいだけど、顎のラインは以前より引き締まってる。
でも、頬は健在だ。
ふっくらしている白い肌に触れると柔らかい弾力に癒される。


こうしている間も寝息を立てているのだからまだ起きないだろう。

そう思ったらぽろりと言葉が零れた。



「なんで俺じゃないの」



ずっと傍に居たのは俺なのに。
なんであいつなの。
恋するなら俺にしてよ、千桜。

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