ハツコイぽっちゃり物語

「千桜なんつー顔してんの」


私の頬をつまんで笑っている彼だ。


「恋ちゃんが摘んだからでしょ。痛いからやめてよね」

「ッ、……千桜が変な顔してるから」

「なにそれ」


なぜか照れたようにそっぽを向く恋ちゃんを見て笑った。


葵生先輩、私ワガママでごめんなさい。

本当、優柔不断すぎて呆れる。
ファミレスのメニューなら即決できるのに。
本当の気持ちに蓋をして、先輩のことを困らせて、私は最低だ。


『自分の気持ちに嘘は良くないよ』
と言った先輩を思い出す。

確かに嘘をついてた、のかもしれない。恋ちゃんに対しての気持ち。


だけど、先輩に恋した私の気持ちは嘘じゃない。ちゃんと恋してた。ちゃんと。
先輩に会うたびに、すれ違ったり、目が合ったり、好きって言ってくれた時も、抱きしめてくれた時も、毎日がドキドキで。


私は先輩にたくさんの初めてを教えてもらったんです。


だから、この(きもち)に嘘なんてない。

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