ハツコイぽっちゃり物語

「……はい?」


昨日の夜って、寝てる時のことを言ってる……んだよね?
俺に何かしたって……。


途端に蘇ってくる昨日の私。


夢から覚めた私を迎えたのは恋ちゃんに対してのかつての恋心。
それに気付いたばかりの私が取った行動は――。



「いや?……な、ナニモしてないよ?」

「…………そっか。分かった」

「あ、うん」


一瞬の間は何。分かったって何。なんの確認??


待って。もしかしてあの時起きてた、なんて事はないよね?
……いや、ありえるかも。
でもでもでも、ちゃんと寝息してたし。あれは確実に寝てたはず!


…………。
~~~っ“はず”なんて確証できないよ。


寝てる恋ちゃんの頬っぺを触ってたこと知られたらもうこの世の終わりだよ?
だって恥ずかしい!


まだ起きてるかも分からない彼を見て小さく息をついた。
そして私も寝返りをうつ。


壁をしばらく見つめた。
特に深く考えることもせず、ただただボーッと。

いつの間にか閉じていた瞼の裏には恋ちゃんが浮かんで、次に葵生先輩が浮かんだ。


夢なのかわからない狭間の意識の中でも先輩はいつもと変わらない優しい笑顔に胸の奥がキュッとしまる。


この笑顔を私のせいで変えてしまうと思うと堪らなく苦しい。
それでも私の出した答えを伝えなきゃいけない。


これ以上先輩を苦しめちゃいけない。


学校が始まったら泣いても笑ってもどんな顔になってもちゃんと伝えよう。


私の“はじめて”を教えてくれた先輩に全ての思いを――。

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