ハツコイぽっちゃり物語
「千桜、どうかした?」
「……っあのね」
意を決して言い出そうとした時、先生が入ってきてみんなに「廊下に並べー」と呼びかける。
ちーちゃんは「うっわ朝礼あるの忘れてた。だる〜」と言いながら席を立って一緒に廊下に出た。
出席番号順に並ぶから私の後ろはちーちゃん。
壁に寄りかかった彼女は「で、『あのね』の続きは?」と聞いてきた。
変な緊張感に襲われながらも重くなりがちな口を開く。
「ちーちゃんに話したいことあるんだ。放課後……」
これを言うだけで心臓が破裂しそう。
なんとなくちーちゃんの顔が見れなくなって進み出した列にほっとした。
体育館に着くとちーちゃんから遅れた返事が返ってきた。
「了解」とだけ。
表情は分からないけど、声のトーンは明るく感じて、なぜかどこか嬉しそう。
……気のせいかもしれないけど。
校長先生の話は相変わらず長くて退屈だ。
周りも寝てたり、友達とコソコソと話してたり……。
当然私もウトウトした。
時々後ろから背中をツンと刺してくる彼女は私の反応を楽しんでいるみたいで声を抑えながら笑っていた。
……どうしよう。やっぱ怖い。
この笑顔を私が消しちゃうんだ。
そう思ったら視界が揺らいできて、誰にも見られていないうちに目元を拭った。
そして、深く息をつく。
私が泣いてどうする。
泣くのは全てが終わってから。
今は、泣く時じゃないでしょ。
大丈夫。
ちーちゃんに嫌われてしまう覚悟で私は来たんだから。
それに、親友には大事なことは隠したままでいたくない。