ハツコイぽっちゃり物語

――……放課後。



あっという間にこの時間が来てしまったことに手に汗を握る。


本当は教室で話そうと思い描いていたけど、2人きりになれる雰囲気にはしばらくなれそうにもなくて、向かった場所は校舎の一角にある日当たりのいい花壇。

ポツンと居座ってるベンチに2人して腰を下ろした。



「ゔっ、冷たッ」


ビクンと飛び跳ねたちーちゃんに今だけでもと笑う。
もちろん私も冷たかったけど、そんな反応する余裕なんてどこにも無い。


でも、どう切り出せばいい?
どうやって彼女を傷つけないように言えば……。

なんて私は臆病なんだろう。
わがままで自分勝手で……酷い女だ。



「――で、いつまでこうしてるわけ?」


重たい空気を斬った声にハッとする。

ちーちゃんは私を見て“なに話って”と言うように眉毛を上げた。


言わなきゃ。
『私も恋ちゃんが好きなの』って。

でもやっぱり怖い。言いたくない。言えない。でも言わなきゃ。


俯いたまま手に汗を握るだけしかできないこんな私をちーちゃんは待ってくれてるというのに。

心臓の嫌な音が私を急かさせる。



「えっと、あのね、話っていうのはね……」


口から心臓が飛び出そうな私にちーちゃんはうんと相づちをする。
そのやさしい声音に胸がズキンと苦しくなって私は言う。




「私も恋ちゃんが好きなんだ」

< 169 / 200 >

この作品をシェア

pagetop