ハツコイぽっちゃり物語
――……放課後。
あっという間にこの時間が来てしまったことに手に汗を握る。
本当は教室で話そうと思い描いていたけど、2人きりになれる雰囲気にはしばらくなれそうにもなくて、向かった場所は校舎の一角にある日当たりのいい花壇。
ポツンと居座ってるベンチに2人して腰を下ろした。
「ゔっ、冷たッ」
ビクンと飛び跳ねたちーちゃんに今だけでもと笑う。
もちろん私も冷たかったけど、そんな反応する余裕なんてどこにも無い。
でも、どう切り出せばいい?
どうやって彼女を傷つけないように言えば……。
なんて私は臆病なんだろう。
わがままで自分勝手で……酷い女だ。
「――で、いつまでこうしてるわけ?」
重たい空気を斬った声にハッとする。
ちーちゃんは私を見て“なに話って”と言うように眉毛を上げた。
言わなきゃ。
『私も恋ちゃんが好きなの』って。
でもやっぱり怖い。言いたくない。言えない。でも言わなきゃ。
俯いたまま手に汗を握るだけしかできないこんな私をちーちゃんは待ってくれてるというのに。
心臓の嫌な音が私を急かさせる。
「えっと、あのね、話っていうのはね……」
口から心臓が飛び出そうな私にちーちゃんはうんと相づちをする。
そのやさしい声音に胸がズキンと苦しくなって私は言う。
「私も恋ちゃんが好きなんだ」