ハツコイぽっちゃり物語
彼女はしばらく時が止まったみたいに動かない。表情筋も一切反応してない。
そりゃそうだ。親友の恋人を好きだと言ったんだから当然の反応だと思う。
私がちーちゃんの立場だったら宇宙を超えて戻ってこないかもしれない。
そのくらい衝撃発言をしたんだ、私は。
サァ、とそよ風が吹くと、ちーちゃんが覚めたように動いた。
なぜかニコッと笑う彼女にバクバクと鼓動が速くなる。
なんで笑ってるの?なんでそんなに嬉しそうなの……?
不思議いっぱいに見つめているとちーちゃんは突然声に出して笑った。
瞬時に身体が強ばる。
「くふフフフっ、あははは!」
「ご、ごめんなさいっ別に取ろうなんて思ってなくて、今更だけど気付いてしまったから……ただちーちゃんには隠したくなくて。ごめんね、ちーちゃんの彼氏――」
「彼氏じゃないよ」
あー涙出てきた、なんて目元を拭う彼女はまだ笑っている。
……ん?いまなんて?
んん?
聞き間違いじゃなければ、『彼氏じゃないよ』って言ってた……?
“じゃない”って言った?
「ん?」
わけがわからなくなった私はちーちゃんを見てはハテナがたくさん頭を埋め尽くすばかりで、自分でも分かるほど眉間に皺を寄せた。