ハツコイぽっちゃり物語
「先輩、ありがとうございました」
頭を下げた私に頷いて、笑って手を振った先輩。
1歩廊下に出た私に後ろから「応援してるよ」と声をかけた先輩に、もう一度“ありがとうございます”と頭を下げた。
ドアを閉めて深く息を吐く。
これでもう私たちは“先輩と後輩”。
これが私が選んだ道だ。
後悔はない、けど……。
やっぱり涙がほろほろと溢れた。
拭っても拭っても、拭いきれなくて、視界はぼやけたままで、息が苦しい。
本当に先輩との恋は私にとって全てが初めてだった。
この初恋を私は決して忘れない。
ありがとう、先輩。
校門へ向かうその後ろ姿に、今すぐにでも駆けて抱き締めたいと思いながら見つめる人に気付かないまま、私は真っ直ぐ前へ進んでいく。
明日からまた笑顔でいれるように……――。