ハツコイぽっちゃり物語
高校生になってはじめて恋をした。
学年1つ上の葵生晴先輩。
“図書室の王子様”と称されている先輩はとても優しい。
声も、言葉も、笑顔も、すべてが優しくて。
私はそんな先輩にたくさん甘えて、たくさんの“はじめて”を教えてもらった。
恋はもちろん。
はじめてのダイエット。
はじめての告白。
はじめてのキス。
はじめてのデート。
はじめての別れ。
……そして、大切な気持ちにも気付くことができた。
私は忘れない。この初恋を。
先輩と恋をしたことはかけがえのない一生の思い出。
ありがとう、先輩……――。
「千桜、あの約束覚えてる?」
「砂場の?」
「そう。あれ嘘じゃないから。もう予約済み。てか決定事項だから」
繋いでいる手に力がこもる。
私も返事をするように握り返す。
「そんなこと言わなくても私はずっと恋ちゃんの傍にいるよ」
「千桜……」
今にも抱きついてきそうな彼から逃げるように私は走り出す。
呆気なく捕まってしまったけれどお互い笑い合って同じ道を歩く。
この手をいつまでも離さずに。
Fine.