ハツコイぽっちゃり物語

あーあ、素敵な金曜日なのになんでこう、ちゃんと話せないんだろう。

やっぱ先輩を前にすると緊張しちゃうんだ。
それは意識してるから、かな。

恋ってこんなに緊張するもんなんだね。
こんなんじゃ、告白どころじゃない気がするよ……。



「じゃ、米倉さんまたね」


そう言って私に手を振ってくれる先輩。


今日もこうして一緒に帰れてるのに私はちっとも前に進められていない。


もう毎週金曜日は葵生先輩と一緒に帰ることになっていて、嬉しいはずなのに、この時間は夢みたいな時間なのに

ただ頭を下げて、手を振って……。
それだけしかできない自分が好きじゃない。


決めたのに。頑張るって。


遠ざかっていく先輩の後ろ姿にしか私はさよならを言えないのか。
情けない。
嘘つき私。


歩幅が小さくなる。
エスカレーターを登る気力もない。
ホームにあがると向かい側にいる先輩の姿を探すのも毎週金曜日は日課になった。


もう行っちゃったのかな。
葵生先輩の姿がどこにも居ないのを確認してそう思う。

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