ハツコイぽっちゃり物語

電車を待ちながら、ぼーっとした頭の中で私を呼ぶ先輩の声がする。

だんだんそれは大きくなってきて
とうとう幻聴まで聞こえるよになっちゃったのか私。……なんて思った。


それだけ好きなんだ。先輩のことが。


うんうんと仏のような顔で私は私を許す。

仕方ない、好きってこういうことなんだもん。


握ってるリュックの紐に力がこもる。
なんだか改めて好きを実感してしまった。
だって、全てがずるいんだもん。

ほんと、ずるい……。



――トントン。



誰かが私の肩に触れた。
その反動で振り向くと目線がバッチリ合う。

一瞬、時が止まった気がしたのはその一瞬だけ息を止めたから。


自分の心臓はバクンバクンと速く、もう聞こえてるんじゃないかってくらい脈を打っているからちゃんと時間(とき)は動いてる。



え、……なんで、ここに……?
さっきお別れしたばかり……てか電車――。


肩に触れられた部分が次第に熱くなる。



「せ、先輩」


声がうわずった。
そんな私の反応をみてまた笑う。

クスクスと笑う先輩は自然と私の隣に立つもんだから一旦この状況を理解しようと下を向いた。


……? あー、えっと、ううん?
こういう時どうしたらいいんだっけ。
ほら、小説でもあるじゃん。
……!そ、そう!なんでもいいから会話だ!会話。



「せ、先輩の好きな――」

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