ハツコイぽっちゃり物語

強い風とともに電車が到着したおかげで見事言葉をかき消された。


な、ないす、タイミング電車……。

あぶないところだった。
なに聞こうとしてるの私。
危うく『好きな食べ物はなんですか』なんて聞くところだったよ!?
恥ずかしいっ。


「そういえばさっきなんか言ってた?」


つり革に掴まってる葵生先輩が私を見下ろして聞く。


この時間帰宅ラッシュみたいで人が多い。
だから結構密着状態ではあるんだけど、さすがにこれはハードル高すぎでは?


私、こんな得しちゃっていいんですか。
つり革に掴まってるだけでもかっこいいなんて反則すぎる。
掴んでいない手を二の腕に置いて台にして首を傾げてる先輩が私を見てる。


泣いてしまいそうなくらいかっこいい……!



「いや、特になにもないんですけど……」

「けど?」

「今日何かあるのかなと思って」


うー……。この距離、この角度の破壊力ぅ。
無理です。これ以上顔見られないっ。


「や〜、今日バイトあること忘れてて。さっき気付いたって感じ。あはは」

「大丈夫なんですか?遅刻とか」

「んー大丈夫、だと思う。バイトっていってもお手伝いみたいなもんなんだよね」


あ、お金はちゃんと貰ってるよ。と加えて言う先輩はなんだか楽しそうにみえた。
そこで働いてる先輩もきっとかっこいいんだろうな。

< 44 / 200 >

この作品をシェア

pagetop