ハツコイぽっちゃり物語
「あ、そうだ。ちょうど良かった。これクーポン券なんだけどよかったら」
リュックからお財布を取り出し、私に差し出したのは、【ほわっとカフェ】の割引クーポン。
「俺そこでバイトしてるから。よかったら友達誘って来てみて」
そう言って、「すみません」と人混みの中に消えていく先輩を見送った。
行ってしまった……。
ありがとうも何も言えなかった。
大丈夫って言ってたけどやっぱ急いでたのかな、なんて思って少し笑みを浮かべる。
手元のクーポンは2枚。
オシャレなコーヒーカップが目印なのかな。
クーポン券のド真ん中にそれがプリントされてるから。
ちーちゃんと一緒に行ってみようかな。
電車に揺られながら夢見心地でいると、あっという間に最寄り駅に着いた。
そこからはもう早送りしてるんじゃないかってくらい時間が過ぎていく。
寝る前にちーちゃんに電話をした。
いつもはLINEを送るんだけど。
今日ばかりは電話せずにいられなかった。
もうこの話には毎週付き合ってもらってて退屈にしてないか不安に思う事もあったけど、ちーちゃんは言ってくれた。
『楽しいから私のことなんて構わないで話せ』と。
なんで命令形なのか分からないけど、でもそう言ってくれるから私はそのままの感情で伝えることができる。