ハツコイぽっちゃり物語
先輩と会うたびに好きが増えていくのは恋をしてるから。
先輩の声が好き。
先輩の匂いも。
笑ってる表情も。
真剣な眼差しも。
だからもっと先輩のことを知りたい。
もっと近くで――。
「葵生先輩っ」
思い切って先輩を呼んだ。
廊下に響く私の声は緊迫している。
「? どうかした?」
「…………っ、また先輩のバイト先に行ってもいいですかっ」
「もちろんだよ。何度でも来て。叔父さんも喜ぶからさ」
爽やかな笑顔を向ける先輩に遠く離れていた距離を自ら縮めて私はいつものように隣に並ぶ。
言えない。
やっぱ言えないよ、ちーちゃん。
告白なんて出来ない。
そんな勇気が私にはなかった。
そう現実を突きつけられた瞬間だった。
……恋ってこんなにつらいんだね。