ハツコイぽっちゃり物語

うわっ。なんつータイミング。
でもラッキー。

俺は軽く会釈をした。


「君は確か米倉さんの……」

「千桜の“幼馴染”の霧山です」

「そうそう、幼馴染くん」


……あー、この笑顔が無性にむかつく。最悪。
千桜の緩んだ顔が思い浮かんできたのもムカつくし、最悪。


なんかもう俺のことなんでもお見通しみたいな顔してるようにも思えてくる。


……一体千桜はコイツに俺のことなんて言ってるんだ。



「こんなところじゃ目立つし、ちょっと場所変えよっか」


そう言って翻した葵生晴。

確かにここは廊下だけどすぐそこにはランチルームがあって、人がチラチラとこっちを見ている。


有名な話じゃ葵生晴は“図書室の王子様”とか言われてるらしい。まあ、王子様だけあって俺から見ても悔しいくらいかっこいい……。


不意にへにゃっと笑う千桜の顔が浮かんで奥歯を噛み締める。

後をついて行くと誰もいない教室に2人で入った。

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