ハツコイぽっちゃり物語

今はそんな話をしたくないなと思いつつも話はどんどん広がって、“図書室の王子様”と“学年一イケメン男子”の話で盛り上がっている。


つまり、葵生先輩と恋ちゃんの話。


顔は平常心を保っているつもりでいたんだけど、2人にはバッチリわかっているみたいで口元がニヤついている。
これじゃともちゃんにも分かっちゃうじゃん!と思いながら私は観念して話に参加した。


「千桜は先輩にゾッコンだもんね」

「うっ」

「千桜ちゃん否定しないんだね」

「あっ」

「そうなの?かっこいいもんね〜」


ちーちゃんと晴菜ちゃんは私の反応を楽しんでいるみたいに聞いてきて、ともちゃんは頷きっぱなし。
もー、こうなるから“今は”嫌だったんだよ。


「もーっ、みんなして面白がらないでっ」

「別に面白がってないよ。でも名前出しただけで顔が強ばるから……」

「それを面白がってるって言うんだよ」


はあ、片想いにこんな苦しんでる私がそんなに面白いんですか。まったく、なんて子たちだ!


「千桜ちゃんは霧山くんのことはなんとも思ってないの?」と聞いてきたのはともちゃん。

私は首を傾げて「なんで?」と言うより先に前にいる晴菜ちゃんが私の後ろを見て小さく声を上げた。

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