ハツコイぽっちゃり物語

「あれって、霧山くんと……葵生先輩じゃない?」


振り向くと晴菜ちゃんが言ってた通り2人が廊下に立って向かい合っていた。


何やら話をしてチラッと先輩がこちらを向く。
その瞬間ドキッと胸が飛び跳ねるけど、先輩たちは気づいていないようで、2人はその場を離れていった。


「なにあの組み合わせ。初めて見た。千桜知ってた?」

「ううん。私も初めて見た」


というか、2人とも知り合いだったのかと興味が湧いた。
恋ちゃんも先輩と知り合いなら言ってくれればいいのに。


「やっぱ2人は有名だね」と晴菜ちゃんが言う。


それは私たち以外にも人がいるこのランチルームでは去っていった2人をみて口々に声を揃えて黄色い声をあげているからだ。


先輩が有名なのは知ってるけど、恋ちゃんも本当にすっかり有名人なんだなと改めて実感する。


私にとっては普通の男の子で、昔からの付き合いの幼馴染だから。そこまでかっこいいとは思わ――……っ。



「……っ」



一瞬中学の時のことがフラッシュバックした。
嫌な思い出。だけど心が弾んでいたような思い出。
たしかあの時の恋ちゃんをかっこいいって思って……私を守るように背中に隠して……。



「千桜ちゃん?」

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