ハツコイぽっちゃり物語
『変わらなくていい』
その言葉は心にあった鎖を溶かしていく。
先輩は魔法使いなんじゃないかって思う。
「先輩は魔法使いみたいですね」
「えーなんだそれ。魔法なんて使えないよ俺」
「知ってますよ。でも私には魔法使いみたいで、――!」
「ううん。魔法使いじゃなくて“彼氏”だよ」
そう言って頭に手を置いた先輩が遠ざかっていく。またねと手を振り返すだけの私は『またやられた』と口元に手を当てた。
まさか、言葉を遮ってキスするなんて思わないじゃん……!
照れたように笑った葵生先輩がいつまでも忘れられない――。
こうして私と葵生先輩は付き合うことになった。
果たして私の心臓はちゃんと保てるのか逆に心配になってしまう。
そして、後日。
食事制限を解除し、たくさん食べて見事元通りになったのは言うまでもない。