【短】アイを焦がして、それから
アイとは
───ジャキッ。
───カシャッ。
だって、思ってしまったんだ。
この世の何よりも、かわいい、と。
ハサミで切り裂かれた音に急かされたように人差し指を曲げた。
シャッター音が思ったより響く。
その音に一番驚いたのは、自分。
「…………あ、」
「なに、あんた」
錆びた緑色のフェンスの奥。
真っ青な瞳が、僕を捕らえた。
怖いくらいつり上がったその瞳がだんだん迫ってくる。あっという間にフェンスを挟んで数センチの距離までやってきた。
「今、撮ったでしょ」
不機嫌にしかめられた顔も、かわいい。
───カシャッ。
あっ。
またやっちゃった……!
「堂々と盗撮するとはいい度胸だね」
「ち、ちがっ……!」
とっさに否定するも、自分でもどうかしていると内心思ってる。
つい、衝動的に、なんてのは言い訳。
透明感あふれる、その顔。
凛とした、その目。
夏服から覗く、その白い肌。
そして、たった今切られた、ざんばらの髪。
褪せたはちみつ色の長かった髪の毛は、右半分だけちょうど耳あたりまで短くなった。
綺麗だ。
それも、どれも、全部。
思わずシャッターを切ってしまうほど、焦がれてやまない。
この衝動を、言い訳以外になんと呼べばいいのか。
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