【短】アイを焦がして、それから



「ど、どんな服部さんも、撮りたい……です」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん」



本気だ。紛れもない本心だ。

どんな姿でも、僕の目にはどうしたってかわいく映る自信がある。

これもある意味、盲目。



「それ、何?」



フェンスを飛び越えた彼女に、持っていた写真を見せると、あのときの苦味が再び浮かび上がる。彼女は苦味を押しつぶすように右の目尻にしわを寄せた。



「……あたし、かっこわる」

「そ、そんなこと……!」

「あるよ。背中丸まってるし、顔ひきつってるし、髪ボサボサだし、ぜーんぜんダメ。最悪」



僕の手ごと写真をはねのけた。


そんなことないのに。

小さく丸められた背中はひどく華奢で、守ってあげたくなるし、ひきつって歪んだ顔つきは感情がありありと伝わってくるし、乱雑に掴んで乱れた髪はどこか危うくて、色っぽい。


彼女にとっての「最悪」は、僕にとっての「最高」で。それなら、彼女にとっての「最高」は僕にとって何になるのか。


ごくりと生唾を飲み込んだ。



「かわいくてかっこいいあたしを撮ってよ。ね?」



ぱっちりウインクされたら何も言えない。


さすがアイドル。自分の魅せ方をわかってらっしゃる。

その思惑に僕はしっかりハマってしまった。


彼女はみんなのものなのに。
まるで今は僕だけの彼女であるようで。


もう、抜け出せない。


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