After the Rain
「あの、風邪引くといけないので……」

僕はそう言い、かばんの中からタオルを取り出す。いつもかばんの中に入れておいてよかった。僕はそのタオルを女性にそっと被せた。

「よかったら、うちでシャワー浴びて行きませんか?」

僕は緊張しながら訊ねる。別にやましい気持ちがあるわけじゃない。本当に心配だったんだ。

「ありがとうございます……」

こうして僕は志帆に出会った。



雨上がりに出会った僕らは、互いに愛した人に捨てられたという共通点から、運命共同体だと思った。そして気が付けば一緒にいる時間が増えて、どちらから愛を囁いたわけじゃないけど恋人になっていた。

「志帆、何読んでいるの?」

「私の好きな小説家の本!すごく面白いの!」

「へえ、じゃあ読んでみようかな」

「オススメはね、これとこれかな」

楽しそうに僕の隣で読書をする志帆を抱き締め、僕はその頭にそっとキスを落とす。志帆の髪はまるで美容師のように手入れされていて、とても綺麗だ。おまけに花のいい香りがする。
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