After the Rain
「志帆?」

志帆は僕を見てボウッとすることがある。その時の目は奥に煌めきと喜びが隠れていて、僕たちの関係は恋人同士じゃなくて過去の傷の舐め合いなんだと知った。

空っぽでいようと思っても、心はすでに深い青で満たされていて無理だった。悲しみと切なさの青だ。こんな憂いに意味があるんだろうか?わからない。

「愛してるよ」

「愛してるわ」

綺麗だったはずのその言葉は、もう汚されていた。そしてその言葉で互いを騙し合っていることに、変われないことに、僕たちは次第に限界を感じていったんだ。

「志帆、おはよう」

「おはよう」

二年前の雨の降る日、僕たちはデートをした。行き先は映画館。面白そうなミステリーがやっていたため、見に行こうとなったのだ。

僕たちは互いにぼんやりとしていて、今日も以前の恋人の夢を見ているのだとわかる。もうこんな関係、嫌だな。そう思っても志帆自身が嫌いになったわけではなく、この気持ちが愛なのか何なのかがわからないのだ。
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