After the Rain
「私ね、あなたに会えて幸せだよ。でも最近は、出会わなきゃよかったと思ってる」

志帆の言葉に、何故か心は傷付かなかった。それは僕も同じ気持ちだからだ、きっと。

「あなたを愛しているはずなのに、心は前に付き合っていた人を求めてる。自分の気持ちが何かわからない。もうどうしていけばいいのかもわからない」

だから、笑ってさよならしよう。そう志帆に言われた時、心に今まであった青が少し消えたような気がした。なのに、僕の瞳は涙を零そうとしていて、それを堰き止めるのが精一杯だ。

「さよなら」

二人の言葉が、初めて重なった。こんな別れの言葉が重なるなんて、神様も意地悪だよな……。

笑った後、志帆は振り向かずに人混みの中へ消えていく。もう二度と交わることはない。そう思うと、胸がギュッと恋をしている時のように苦しくなって、堰き止めていた涙があふれていく。

僕たちが本当に幸せを手にすることはできるのだろうか?過去の人を忘れてしまうような人に出会えるのだろうか?そんなこと、神様にしかわからない。

今はただ、この胸にある後悔を語って、夜に溺れていよう。夢の中でならきっと、遠く描いていた日々があるはずだから……。
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