夜の薄暗い隅っこで
「君くん、君くんしんどいです」
「首を掴んで揺らさないでください」
「人を傷つけてしまう人間です。言葉は傷つけると思いますか? 私はこの軽はずみな口をしばしば縫い止めてしまいたい。でもね、私の大切を誰かが嗜めると思ったら、それはそれで気に食わなくて、平和が全てを保たないこと、歳を重ねるごとに知ってしまったのです。生まれた時から私たちは死に向かっているというのに、こんな人生を有意義だと一口に言えますか」
当たり前に叶わないことを人はつい何かに重ね合わせたりこうありたいとそればかり言いますね。ないものねだりで、見たくないものは見なければいいのにわざわざ目にして傷ついたり、かと思えば誰かのせいにして毒を吐く様に、必死に顔を振って堪えている。
ええ、私が弱いのは私のせいなのです。
すべてはこの心次第、私の見る景色次第ですよ、なんて。後ろ暗くて前も向けやしない。
「君くん、君くん」
「聞こえてます」
「君くん、辛いです」
「わかってます」
「もう、死んでしまいたい」
「本当に贅沢なひとですね、聞いてください町さん」
「聞きたくない」
「死にたいなんて思うのはね、世界で人間だけですよ」
聞きたくないって言ったのに、なんで言ったの君くん、ばか。