Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

“弟になる”……なんて。提案した当初は、とてつもなくいい考えだと信じてた。

入学式での思わぬ邂逅で彼女の人となりを知ることが出来たし、ツテができたと単純に喜んだのも、結局まだまだ子どもだった証。

その日の夜、お母様と二人きりの夕食を屋根裏部屋で食べた(お父様がいない時によくある使用人達の嫌がらせだった)後、お母様に面と向かって言われた。

「カール、女王陛下に会ったそうね」
「はい」

使用人には理解できない日本語でのやり取り。ドイツ語とともに日本語も同じ程度に勉強してきたから、お母様と二人きりの時は専ら日本語で会話をしていた。

やはり、お母様には全てが筒抜け。
女王は上手く警護をまいたつもりだろうが、王宮のシークレットサービスは騙せても、お母様の組織のエージェントたちは騙せない。
政治的な関わりの話をするのに、だれも近寄らない薄暗い部屋はもってこいだった。

「……ミルコ女王陛下の微妙なお立場は理解してるわよね?」

“こと”に関わるお母様がそれを言うのか、と可笑しく思いながらも、表面的には生真面目な顔で返事をしておいた。

「はい。ミルコ女王陛下はあくまで中継ぎ……ゲオルグ王太子殿下が成長するまでの隠れみのの傀儡に過ぎないお方です」

当たり前の事実なのに、その時なぜか胸がズキッと痛んだ。

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