Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
お母様の茉莉(マリ)は、中肉中背の平均的な日本人女性。顔だちも月並みであるから、こちらの人間には東洋人という括りでしか見えないだろう。華やかさが嫌いだから、紺色のウエストに絞りの入った地味なワンピーススーツを着てる。
「その認識は、ある意味正しくてある意味間違っているわね」
食後のデザートに、とお母様から西洋梨のラ・フランスを丸ごと出された。 ワイルドだ。
「そうですか?」
指先で何とか皮を剥きながら、お母様の言葉の意味を考える。苦労した末にかじった梨は格別美味しい。
(お母様がどちらにつくのか、によって彼女の見方も変わるわけか……)
おそらく、組織の指示もあり今のところオーベン公爵家は中立を保っている。
父のユリウスはちゃらんぽらんで流されやすいから、今まで人に散々利用され悪役にされてきたが。命懸けで母に求愛した結果、自分というものを取り戻し、今は政治面で妻を重宝している。
お母様は世間では公爵家を滅ぼすとか言われ悪妻扱いらしいが、事実はまったくの真逆でお母様のアドバイスがあればこそ公爵家は今も存続しているのに。
お父様が改心していなければ、オーベン家は公爵家と言えど潰されていたかもしれないんだけどね。
まぁ、視野が狭いやつらしか居ないから仕方ないけどさ。