Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
「お母様は、女王陛下をどう思ってらっしゃいますか?」
子どもらしく無邪気に訊くふりをして、核心を突いてみた。 わざとらしいのはお母様も承知の上だろうけど。
「……ただの子どもね」
ばっさり、とお母様は女王陛下をそう断じた。
「本当に、その辺りにいそうな普通の子どもよ。秀でた才能も能力もない……ただ、体が弱いだけの女の子」
お母様は自分だけ果物ナイフで梨の皮を剥いていた。ずるい。
「ただのいち市民なら、よかったんでしょうね。体が弱いなんて言ってもそれに合った暮らしかたも働き方もある。その方がどれだけあの方のためになったか……でも」
ザクッ、と梨にフォークを刺してお母様はぼくにそれを差し出した。
「不幸なことに、あの方は王家の長女として生まれてしまった。まだ生まれる順番が違っていたら、王太子の妹として保護され育てられたのかもしれない。
けど、弟が生まれた後に父国王が崩御され、直系の血すじはあの方がたしか居なかった。
傍流は何代にも渡り血を遡らなければいけない遠縁ばかり……反目する連中が遠縁の血すじの男を担ぎ上げる前に、と今の大臣が強引に法律を変え、ミルコ女王を誕生させてしまった。
それが、ただの子どもには不幸にしかもたらさないと思うのよ」