Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
ただの子ども……か。
その時まだ6歳のぼくも、女王には似たり寄ったりの印象を抱いていた。
ぼくと会ったときの彼女は、素の性格が出ていたのだろう。見知らぬ子ども相手に取り繕う方が不気味だけど。
「お母様、ぼくもそう思います。彼女に女王は相応しくないのでは?」
あんな華奢な身体で、国を背負う重責に耐えうるとは思えない。きっと太陽の光を浴びてのびのびと暮らした方が、彼女のためにもなる。
けれども、お母様は大きなため息を着いて最後の梨をかじった。……それぼくの。
「……そう、ほいほい就けたり退けたり出来たら苦労はしないわよ。けど、王という地位はこの世で一番尊い身分。ゆえに、一番取り扱いが難しいの。一度就いたらよほどの理由がなければ退位もできない……基本は崩御での代替わりだものね」
「……ですよね」
「あとは……そうね。クーデターだの革命だの起きた時かしら」
「!」
お母様が言葉を慎重に選びながらも、実感を伴った声音でおっしゃった。
「……やはり、国民の間に相当不満があるんですね」
ぼくがそう言うと、お母様はハッキリと肯定はしなかったけれども。物言いたげな目がそうだ、と認めていた。
「……覚えておきなさい、カール。あなたをわざわざ市民の子弟も通うグルンデシューレに遣った意味を。
子どもなら図々しいまでに嗅ぎまわっても不審に思われない。その目で、耳で、肌で感じてきなさい。この国の現状を」