Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

『あ、オレも聞いた!小麦の価格を倍にするって言ってたって』

粉屋の息子のフランツが相づちを打つ。

小麦等の穀物類は価格変動が起きないよう、一度国が全てを買い上げて調整している。……が。それは言うなれば、国が在庫の全てを持って管理しているということ。
小麦粉を作ろうとするなら、当然国から原料の小麦を買わなければならないわけで。

安定した供給量と価格変動を抑えるため、等との名目は今や形骸化していて、国の収益のために段階的に価格を釣り上げているのは誰が見ても明らかだった。

小麦粉は主食であるパンの原料。
価格が上がれば、当然パンの値段も跳ね上がる。
今まで1個10ソルト(だいたい100円)で買えたパンがいきなり20ソルトになれば、かなりの家庭が打撃を受けるだろう。
他の生活必需品もじわりじわりと値上りしている。
生活費が倍になれば、今までやっと暮らしてきた人たちは命の危機さえある。

それを女王の名のもとに実施するものだから、当然誰もが女王がやらせたものだと思う。だから、女王への恨みつらみは相当なものとなるだろう。

黒幕は王太后と大臣だというのに。

(ビビリなやつらほど裏で隠れてこそこそやるよな)

まったく大人気ないよな、と連中には心底呆れていた。

また、そんなことを言えばミルコ女王は笑うだろうか……とぼんやりとあの笑顔を思い出す。

彼女に相応しいのは薄暗い王宮よりも、こういう普通の生活だよな、と改めて感じた。


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