Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『よくわかんねえよ!』
ヨーゼフがスプーンを振りかざして憤る。
『もっとわかりやすく言えよ!』
これが、6歳児の一般的な反応だろう。
少しでも政治的な話など理解できるはずもなく、物事は白か黒かでしか判別もできない。
王立グルンデシューレに入学したならある程度の賢さは必要だが、皆が皆アーベルの様に聡いわけでもないだろう。
『仕方ないね……』
アーベルは小さなため息を着いて、実にわかりやすく噛み砕いて説明した。
『つまり、女王陛下は自分で物事を決めてない。代わりに別の人が色々決めてるってこと』
『ええっ、それホントか!?』
いきなり立ち上がって、すっとんきょうな叫び声を上げるフランツ……目立つから止めてくれ。
ほら、監督の先生がたの目集まったし。世話役の上級生達の視線が痛い……
『フランツ、とにかく座りなよ。ワイラー先生にまた聖書の写しやらされるよ』
『げっ……あれ嫌だ』
入学早々罰を食らったフランツは、トラウマと言えるその内容で脅せば素直に従った。
『ごほん……』
すぐ近くで咳ばらいが聞こえて振り向けば、後ろにワイラー先生の姿が。ぼくたちは慌てて食事を再開すると、ただ黙々と平らげていく。
『食事中に私語などもっての他です、それからあなた方の班は食前のお祈りがいい加減でしたね。全員明日までに聖書の書き取りを命じます』
……結局、罰は逃れられなかったけどね。