Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
女王暗殺指令
“女王を暗殺せよ”
その命令が届いたのは、第3学年が始まったばかりの8月30日のこと。
いつもと同じ朝を迎えたはずだが、突然見知らぬ客人が招き入れられていた時から違和感を覚えた。
「お母様の兄……つまりぼくのおじ様ですか」
「ええ。真宮 明人(まみや あきと)よ。この国にはNGOの交渉役で来たの」
朝食の席でお母様はそう紹介してくれたが、生まれて初めて会う叔父はまったくの無言。ろくに手入れされてないぼさぼさの黒い髪で、あごひげは生えっぱなし。着てるものも薄汚れくたくたのシャツに擦りきれたジーンズ。元は白かったであろうスニーカーは、茶色く変色までしていた。
分厚いメガネと長い前髪と髭であまり表情は見えないし、ひたすら目の前の料理をがっついてる。しかも品のない食べ方だ。何日食べてなかったみたいだ。
ぼくも身なりにはあまりどうこう言いたくはないが、お世辞にも公爵家に相応しい客とは思えない。
ただ、ぼくも日頃意識して人を見てきたからわかる。
ダボダボで体に合ってないシャツを着ているが、かなり鍛え上げられた身体だと。
粗野な行動をしているように見えて、そこには計算された振舞いと朧気ながら感じた。
あと、気配というか……
わざと、わかりやすくしている。
(この人は……)
そして、ぼくはあることを試すことにした。