Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
(やっぱり間違いない……明人叔父さんはクロだ)
ぼくはそう判断するしかなかった。
クロ=お母様が所属する組織のエージェント、という意味だ。
テーブルを挟んで勉強を見てもらう……一見よくある日常風景で、パッと見不自然な点はなかったように見える。
けど、明人叔父さんはぼくにさえ距離を取るのを忘れなかった。血の繋がった8歳の甥というのに。物理的な面でも、心理的な面でも。
それから、テーブルの位置。
どれだけ近い調度品でも最低限2mは離れていた。 窓やドアからも一番離れた場所へ配置されていたし、イスも邪魔にならないスツール。
文字を書く時も裏写りしにくい紙に、表面に跡が残りにくいやわらかめの鉛筆を使ってた。
ただ勉強を教えるだけならこれだけの警戒は必要ない。むしろ、手間が増えるだけだろう。
(この時期に来るなど不自然だ……一体何が目的で)
グルンデシューレの昼休み。食堂でいつもの食事を前に、ぼくは悩んでた。
『カール、まったく食が進んでないみたいだけど。何か悩みごとでもあるのかい?』
アーベルがさすがの観察力で、ぼくに訊ねてきた。
『……うん、まあね』
否定してもどうせ探られるだけだから、と曖昧な笑顔で肯定しておいた。