Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『ボクは、君だから信頼してるし理解してくれると思う。それに……もしやってくれるなら、ただでとは言わない。君に十分な報酬を用意するよ』
『報酬?』
アーベルが訝しげなのも仕方ないだろう。ぼくは公爵家嫡男とはいえ、まだ8つのグルンデシューレの学生に過ぎない。
こんな子どもに何ができるんだ、と考えるのが当たりまえ。
だが、ぼくは自信があった。
この領地の伯爵の悪行は領民の隅々まで知れ渡っている。口をつぐんでいるのは、報復を恐れているからだ。
だが、公爵家の名前で圧力をかけた上に、バカ伯爵を追い込めばどうなるか?
自滅に追い込む手段はいくらでもある。
だが、幸いバカ伯爵には跡継ぎがいない。
後継者のとある付帯条件を、やつの特許状に書き加えさせるんだ。
だから、アーベルにこう言えたんだ。
『伯爵の地位を、君にあげるよ』