Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『へえ、面白そうな話だね』
やはり、アーベルは乗ってきた。
普通の子どもなら、考えもせず飛びつくか警戒するか……だろうけど。彼は含みがあると解った上でそう言ってる。
『ぼくが、伯爵の養子にでもなるのかな?』
『それが一番手っ取り早いけどね』
アーベルはフッ、と口元だけで笑う。
『伯爵の地位と引き換えなのだから、相当な難事だろうね……例えば、女王陛下に関わることとか』
『……』
『図星か』
アーベルにはとっくに、ぼくの意図など見抜かれていたらしい。お手上げだ。
『ボク……きみに話したことあったっけ?』
『ないよ。だけど、カールは不必要なほど女王陛下の話題を避けてたじゃないか。ならば、逆に気になる相手だと察してたよ。意識してなければ避けるなんてことはしないはずだからさ』
むむ、と唸るしかなかった。見事な観察力と洞察力に、白旗を上げるしかない。やはり、アーベル相手だと下手に隠してもどうせバレる。
自棄に近い開きなおりをしたぼくは、洗いざらいぶちまけることにした。
実家の実情と女王陛下との出会いと、叔父とのこと。
それを聞いたアーベルは、難しい顔をして腕を組んだ。
『……成る程。確かに、君の叔父が密命を帯びているのはほぼ間違いないだろうね』
『だよね……確かめたいけど、ボクにはその方法がないんだ』