Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
なるほど、と得心がいった。
アーベルの親の信頼が厚いのも、その子どもが期待されるのも。
結局、人間は地位や身分だけが全てではない。
ぼくだとて、たまたま公爵家に生まれただけ。
だが、この国では未だに旧態依然とした体質が蔓延っている。
女王陛下にもう少し力があれば変えようもあるだろうに。
(……だけど、きっと彼女ひとりでは無理だ)
入学式にほんの少し会っただけだが、彼女だけでは到底狡猾な連中とは渡り合えないだろう。
現実には、傀儡政権の象徴として祭り上げられているだけ。 暗愚の女王として、批判の矢面に立たされて。
『……女王陛下の支えになる人はいないかな?』
『君の実家じゃ無理なのか?』
ぼくの呟きに、アーベルは当然の疑問をぶつけてきたけど。ぼくは微妙な答えしか返せない。
『話した通り、今の公爵家で方針を決めるのはお母様なんだけど。いまいち掴みきれないんだ。一応、女王様の後ろ楯になれば、これだけメリットはある……って希望は伝えているけど……』
『……そうか』
アーベルは思案顔になり、ううんと唸った。
そして、しばらくしてよくわからない質問をしてきた。
『時に、カール。君に婚約者はいないのかい?』
『え、いないけど。なんで?』
何となく嫌な予感はしたけど、やっぱりアーベルはニヤリ、と笑う。
『よし、カール。君が女王陛下と婚約すればいい!』
とても素晴らしい笑顔で、アーベルはとんでもない爆弾発言をかました。