Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『なら、きみの方が女王陛下に相応しいじゃないか。爵位なら例の伯爵の地位を必ずあげるし……確かに、公爵家に比べれば見栄えはしないだろうけど』
『で、でででも……僕なんかが女王陛下と……で、でも……あの方と一緒にいられたら……お支えして……護れたら。幸せだろうな……』
赤い顔のまま、アーベルは何やらぶつぶつ呟いてる。恋すると、さしもの秀才も形無しらしい。妄想する友達は何だか幸せそうで、何も言えなかったけど。
(こいつなら……女王陛下に忠実に仕えるだろうな……あれ?)
大人になったアーベルと女王陛下との光景を想像した瞬間、なぜか胸にチクリとした痛みが走った。おかしいな、と胸に手を当ててみるけど、たぶん物理的な痛みじゃない。
(……なんだ、今の?)
首をかしげながら、ぼくは暴走するアーベルの妄想を止めるべく声をかけた。
『アーベル、もうそのくらいでいいだろ』
『こ、子どもは……やっぱり王家を継ぐから最低一人は欲しいよな……でも、できたら3人……あ、あの方は華奢であんまり無理をさせるのも……男の子一人だけでもいいかな……けど、王太后とかに対抗するには多い方が……多いと護りきれない……だけど、僕がしっかり護れば……』
何やら具体的な“家族計画”までしっかり立てる8歳も怖いよ……。
けど、アーベルならやらかしそうなんだよな、とあきれながらも。また、チクリと胸が痛んだ。