Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

そして、アーベルの提案で叔父さんの部屋に2人で突撃した。 もちろんぼくはすでに入ったことがあるから、あくまで彼が好奇心に任せて行動したふりで。デザートを終えた時にアーベルが“おじさまから勉強を教わりたいです”なんてもっともらしい理由で強引に着いていったんだけど。
不思議と明人叔父さんは彼を拒否しなかった。



「こんにちは、お邪魔します」

アーベルが日本語を話せたのも驚きだったけどね。どうやらぼくがお母様と日本語でやり取りするから、その内容を聞き取ってやろうとこっそり勉強しておいたらしい。
……いい性格してるよ、ほんと。

で。明人叔父さんは部屋に入ってアーベルが持ってきたテキストをテーブルに広げると、隣にあるレポート用紙に素早くペンを走らせる。

その内容は

“女王について教えろ”

だった。

「え……それは、女」
言いかけたところで、大きな手に口を塞がれた。明人叔父さんは口に人差し指を当てて、“黙ってろ”のジェスチャー。

(え……どういうこと?聞かれたらまずいこと?)

“盗聴されている。勉強を見るふりをするからすべて筆談で”

盗聴ーー?

あくまで組織の拠点であるから珍しくないかもしれないけれども。お母様の実の兄ですら疑われる対象と知って、なんだかがっかりした。

“女王について何を知りたいのですか?”

アーベルがそう問いかけると
“全てだ”
と叔父様は答えた。

“直に会った人間から詳しく知りたい。人から人へ伝わった情報は信用ならない”

< 38 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop