Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
「…………」
(ほら、黙りこんじゃったじゃないか! ばかアーベル)
心のなかで思わず親友に悪態をついてしまったけど、仕方ないじゃないか。今まで順調にコミュニケーションが取れてたのに、それを自ら断ち切ってしまって……
叔父さんはスッとテーブルから離れてしまい、もうこれ以上何も訊けないとがっくりしてしまった。
(ーーバカ!叔父さん離れちゃったじゃないか)
(ごめん、失敗しちゃったかな)
アーベルを小声で非難しているとコトリと小さな物音が聞こえ、視線を向ければテーブルの上にはペンダントが置いてあった。
大ぶりの赤い宝石があしらわれ、見覚えのある紋章をデザインした白金(プラチナ)の見事な細工物だ。
“これは……今の女王陛下の紋章ではないですか?”
“そうだ”
叔父さんはあっさりと認めた。
“これはおまえたちが持っておけ”
“どうしてですか?ぼくたちには高価過ぎます”
“おまえたちの大好きな女王陛下が居なくならないためだ”
え、と思わずアーベルと顔を見合わせてしまった。
“この家は……姉でさえ信頼ならない。だが、おまえたちならば信頼出来るとおれは判断した”
(ちょ、それはまだ8歳の子どもには荷が重いような……それに、第一こんな短時間で信頼される意味がわからないよ)
ぼくが心の中で突っ込んでいると、アーベルがいともあっさりと引き受けてしまった。
“わかりました。お預かりします”
“賢明な判断だ”
そして、叔父さんは驚くような目的を明かした。
“組織は女王を不安分子と判断し、排除を決定している。つまり……暗殺指令が出た。おまえたちはその阻止に協力しろ”