Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
そして、思いもよらない展開は翌日にもあった。
『小椋 明人だ。休んだ先生の代わりを臨時に務めさせていただく』
いきなり、叔父さんが外国語の臨時教師になってグルンデシューレに現れたんだから。
ぼさぼさだった髪はセットされてひげは剃られ、まともな格好をした叔父さんは……悔しいけど、スマートでとってもかっこ良かった。
ブランドものじゃない安物のスーツだけど、ピシッと糊がきいてシワひとつないし、着こなしかたもオシャレで。まるきりモデルさんみたいだ。
ぼくたちのグルンデシューレは男女別にクラスが別れているから、女子がいたらさぞや騒いだだろう。
それにしても、とぼくは初めて見る叔父さんの瞳で気付いた。
(叔父さんて……目が紅いんだ。初めて見る)
あれ? でも待てよ……今まで見たことがないと思ったけど。もう一人居たような……?
白い肌によく映えた、ルビーのような紅い瞳……青い空の中では目立った。
(……あ!)
思い出したくても思い出せない。もどかしい思いで授業を受けている最中。フッと頭のなかに浮かんだ光景は、2年前の入学式での出来事。
式が退屈で抜け出したぼくは、庭園でとある女性と邂逅を果たしたんだ。
(そうだ……思い出した!女王陛下だった。彼女も紅い瞳をしていた……!!)