Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『……どう思う?』
『やっぱり、あの人の関係で急に組まれたんだと思うよ』
『だよね』
授業後に訊ねれば、やはりアーベルもぼくと同じ意見だった。
1年と2年次には無かった“王宮へ行けるイベント”が急に作られたのは、間違いなくお母様の組織の仕業だろう。
(にしても、王立のグルンデシューレにまで影響を及ぼすことができるなんて……とんでもない力があるんだ)
その組織が、女王陛下を不穏分子として暗殺対象に選んだ。
(どうして……?)
子ども心には納得できない。彼女はどんな悪いことをしたと言うんだろう。確かに、周りの皆からはよい評判は聞かないけど……それは到底信じられないものばかりだ。
あんな妖精のように純粋無垢な……ただの少女に過ぎない一人の子が。女王になったからといって増長し、暗愚の王となるだろうか?
“弟とわたしは違うから”と、寂しそうに話した女の子が。
(いや、違う。絶対に。きっとなにか理由があるんだ)
その日の夕食はいつも通りにお母様と二人きり。叔父さんはグルンデシューレで用事があってまだ帰ってきていない。
公爵の正妻として相応しい待遇をされたお母様は、見事なマナーで食事をされる。ぼくも長男として過不足ない作法は出来てると思うけど。
広いダイニングルームに大きなダイニングテーブル。慣れたとはいえ、やっぱり落ち着かない。
飲み物を給仕される時に慌ててしまい、グラスを倒してしまった。給仕が離れた瞬間、お母様が口を開かれた。
「カール……あなた、明人となにかあった?」