Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
思わず、両手を膝に置いてグッと握りしめた。
「……そのことは……皆様ご存知なのですか……?」
「皆様……というより、王宮にいる者なら知らぬ者は居ない“公然の秘密”ね」
「…………」
それ以上、お母様に訊かずともわかった。
女王陛下に味方するものは居ないのだ。
今まで一人くらいはいたかもしれないが、きっと王太后に潰されたのだろう。
国で一番の大貴族の娘であり、先王の正妃で女王陛下と王太子の母である王太后に逆らえる人間など、現実にはほんの一握りしかない。だが、その一握りは保身のため王太后に迎合する道を選んだのだ。
我が、オーベン家も……。
「……お父様は……女王陛下に少しでも……同情はされていますか?」
「……」
ふう、とお母様はもう一度ため息を着いて、首を微かにふった。
「……お父様は……胸を痛めてらっしゃるわ。けれど、睨まれたら公爵家と言えど簡単に失脚させられる。
もちろん……わたくしの実家(組織)が簡単にはそうさせないけれど。表立って動くわけにはいかないの」
わたくしたちのためなのよ、と暗にお母様の出身地とぼくに流れる血を仄めかされ、グッと言葉に詰まった。
今は収まりつつあるとはいえ、伝統と格式ある公爵家の妻と嫡男が東洋人の血を引くのに、反発する者は少なからずいる。
その急先鋒が父の弟、ヨーゼフだ。
彼は名門貴族から妻を迎え、娘のマリアが生まれている。確かに血筋はマリアの方が公爵家に相応しい。