Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
加えて、以前の父は悪どい貴族の代表だった。
脛は傷だらけ。叩けばいくらでも埃が出る身。その上、異国の血を引く僕達母子というウイークポイントがある。
つまり。父が公爵家の力を振るおうとすれば、過去の所業が明るみにされ、失脚させられる恐れがあるのだ。
(べつにぼくは貴族でなくなってもいい……でも、そうなると女王陛下の力になるどころか近づくこともできなくなるんだ……)
ぼくが貴族の子息だから、女王陛下にお会いできるチャンスもある。けれど、いち市民になれば顔を見る機会さえ滅多にないだろう。
けど……!
なら、何のための公爵という身分なんだろう。
薄くなったとはいえ王家の血が流れている父には、かなり下位だが王位継承権さえある。
その父でさえ現在の女王陛下になにもできないとは……意味なんて、ないじゃないか!
(……貴族には義務もあるが、国のためになることを成す力があるはずなのに……それができないなら、ぼくは……公爵家なんて要らない!)
今まではただ漠然と将来はオーベン公爵家を継ぐものだ、と仮定して懸命に勉強してきたし自分を磨いてきた。けれども……それが無駄だと理解して、全身から力が抜けるような脱力感を感じた。
(要らない……公爵家なんて!……なら……従妹のマリアの方がよほど相応しいじゃないか……)
ぼくのなかで、相続放棄をしようと決めた瞬間だった。