Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
「…………暗殺?」
さすがにマリアも、にわかには信じられないらしい。 眉を寄せて、思いっきり不審な眼差しをこちらへ向けてきた。
「そう、暗殺。それだけじゃない……女王陛下は、実の母親……王太后からも疎まれ、殺されそうなんだ。陛下をお助けしたい。そのためにも、君の力を借りたいんだ」
ぼくが必死になって訴えても、マリアはやはり冗談と受け止めたようだった。何度も首を振った彼女は、特大のため息をついてこう言う。
「カールお兄さま……悪質な冗談はお止め下さいません?今の発言は不敬過ぎますわ。相手がわたくしですから、一度きりなら忘れてさしあげます。ですが、それ以上はおっしゃらないで下さいませ」
やっぱり、とぼくはため息が出そうになった。
マリアはヨーゼフ伯父様の娘だ。生まれながら相当な聡明さがあり、頭がよく回る。貴族の娘としては、最上の教育を受けてきたことだろう。
ただ、やはりというか。人生経験や得た知識が偏っている。
仕方ないことだが、王太后がどれだけ悪どいかなど本気で理解できないのだろう。王太子派のヨーゼフ伯父様が、わざわざ教えるとは思えない。
きっと、まだ実際に女王陛下を直接存じ上げないんだ。グルンデシューレの入学式典で、遠目に姿を拝見したくらいだろう。
ぼくのように多少個人的に接したことがあれば、わかるはずだけどね。
とはいえ、こんな程度は想定済み。だから、直接叔父さんに説得に当たってもらった。