Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
就寝前に明日のスケジュールを確認しながら、どうにか今日をやり過ごせたことに感謝をする。
ぼくも同じレジデンスの一戸を借りて住んでいるから、帰るのもすぐ。防犯と警備上の理由から、仕事(ビジネス)と生活(プライベート)のほぼ全てがこのヒルズ内で完結するのはありがたい。
レイ王子にもしっかり言ってある。このヒルズ内からは余程の理由がない限り出るな、と。
まだ幼子ならともかくも、今の彼は立派な成人男性で社会的にも成功している。次期王位を争うレースで彼を担ぎ出せば、立派な旗印になり得る。
ゲオルグ2世陛下とカタリーナ王妃の間には、一人娘のミレイ王女のみ。未だ男子継承を至上とするグレースの貴族議会が紛糾することは容易に想像できる。
(ミルコ女王も、レイ王子を生んだ時はまさかこうなるとは思わなかっただろうなあ)
ぼくがミルコ女王陛下と初めて会ったのは、ミルコ女王が10歳でぼくが3歳の時だった。
当時、まだ彼女には味方が一切居なかった。
オーベン公爵家嫡男としてのお披露目で、儀礼的にお会いしたに過ぎない。
まだ3つのガキに、彼女を取り巻く複雑な事情やら立場など理解できるはずもなく。
ただ、朧気ながらも感じた。
自分よりたった七つ上の女の子の、とてつもない寂しさを。