Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
そして、炊事を手伝っていたマリアが眉を寄せて目の前にあるものを見つめた。
『……この今、作っているものは?家畜のエサですか?』
『なに言ってるんだ。罪人のエサに決まってるだろ?』
『えっ!?』
マリアが目を見開いて驚いている……何だろう?と鍋の中身を素早く確認したぼくも、それを見て目を見開くしかなかった。
煮込んでる鍋のなかは、何かの種、果物の皮、動物の骨、野菜のくず類……つまり、普通は生ごみになるものだ。マリアが家畜のエサと言ったのも納得できる。
それが、罪人の“エサ”?
『ほら、なにしてんだい!あんたは暇ならさっさと罪人にエサを持っていきな』
ひび割れ欠けたところもある、ひどい状態の皿にその汁を盛ると、おばあさんに押し付けられた。うっ、と鼻をつまみたくなる。腐ったような、ひどい臭いが鼻を突いたからだけど。
(まさか……腐った生ごみを煮てるの!?)
『もっとましな器や食事はないんですか?』
『罪人になど使う皿はないね!……餓死しなきゃいいって言われてんだ。エサがあるだけましだろ。生意気言わず、さっさと運びな‼』
信じられない気持ちで皿を持ったけど、ひび割れた部分から中身が漏れだす。熱いのは嫌だから、その辺りの板をトレイ代りにして、おばあさんに教わった“罪人”へ食事を運ぶ。
日も射さない薄暗い地下へ降りていくと、息が白くなるくらい冷気が酷くなる。
そこで、真実を見たときの衝撃は忘れられない。
埃とかび臭い石造りの地下室。錆びた鉄格子の中に、やせ衰えた女性が擦りきれたボロボロの衣服を纏い、足には鎖で繋がった枷がはめられ……床にあるのは朽ちた桶と、雑草を干したようなものが敷いてあるだけ。
そんな場所に、今の女王陛下がいるなんて。誰が思うだろうか。
しかも、明らかに病気なのに……なにもされず繋がれ冷たい床に放置されているなど。